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益子「陶庫」で出会った、家族を繋ぐモダンな一客。伝統と「今」が交差する食卓の風景。

「形あるものはいつか壊れる」なんて、もっともらしい言葉を自分に言い聞かせても、お気に入りだった茶碗が粉々になった瞬間の、あの静かな絶望は埋められるものではありません。

長年連れ添った道具を失った喪失感。しかし、その小さな「事件」こそが、我が家の食卓に新しい、そしてもっと深い色合いをもたらすきっかけとなりました。

「せっかくだから、次は家族みんなで、一生モノを探しに行こう」

そうして車を走らせたのは、まだ肌寒い季節の栃木県・益子の街でした。

偶然の出会いは、大谷石の蔵が並ぶギャラリーで

益子の目抜き通り、趣のある店内は大谷石の蔵のようなギャラリー「陶庫」。 数多ある窯元の中でも、伝統を重んじながら洗練された感性を発信し続けるその場所に、目的の器はありました。

ふと目に留まったのは、道祖土和田窯(さやどわだがま)の茶碗。 これまでの「益子焼」のイメージを心地よく裏切る、その佇まいに一瞬で心を掴まれました。

直線的でモダン、それでいて温かい「ツートン」の魅力

まず目を引いたのは、その潔いフォルムです。 益子焼らしい「ぽってり」とした厚みは残しつつ、ラインは極めて直線的。シュッとしたモダンな顔立ちをしていながら、手に取れば土のぬくもりがしっかりと伝わってくる。

特に、バイカラーで彩られた「ツートン」のデザインは、現代のダイニングテーブルに置いても全く違和感がありません。伝統的な手仕事と、現代的なデザイン感覚が、絶妙なバランスで共存していました。

「お揃いだけど、色違い」という、家族の選び方

今回の旅の醍醐味は、益子焼の器を見ながらたわいもない会話をしながら、気に入ったものがあったら相談して、器を選ぶこと。 道祖土和田窯のこのシリーズは、その楽しさを最大限に引き出してくれました。

「形はお揃いだけど、色はそれぞれが一番気に入ったものを」

家族で並んで器を手に取り、釉薬の表情を比べる時間。同じ窯、同じ形であっても、焼き上がりによって微妙に異なる土の息遣い。 「パパはこっちのモノトーン」「私はこの明るいツートン」と、家族それぞれが「自分の一客」を決めていく過程は、単なる買い物以上の、何とも豊かな体験でした。

ネットで同じものを数揃えるのは簡単ですが、あの静かなギャラリーで、ああだこうだと言いながら選んだ時間は、茶碗を見るたびに思い出す大切な「家族の栞」になりました。

数ヶ月使ってみて。割れた日のショックが、毎日の「充足感」に変わった理由

実際に使い始めて数ヶ月。 あの朝、茶碗を割ってしまった時のショックは、今や「あの事件があったから、この器に出会えたんだ」という充足感に変わっています。

直線的で安定感のある形は、実際に使ってみると驚くほど持ちやすい。厚みがあるおかげで、炊き立てのご飯の熱が優しく手に伝わり、最後の一口まで温かさを保ってくれます。

食卓に並ぶ「色違い、お揃い」の茶碗。 それは、それぞれの個性を認め合いながら、同じ食卓を囲む家族の形そのもののようにも思えるのです。

道具を新調することは、暮らしの解像度を上げること

形あるものはいつか壊れる。けれど、壊れたからこそ生まれる新しい物語がある。 道祖土和田窯の茶碗は、そんなことを私に教えてくれた気がします。

もしあなたの食器棚に、あるいは心に、少しの「余白」ができたなら。 次の休みには、運命の一客を探しに益子へ車を走らせてみてはいかがでしょうか。

そこには、あなたの日常を少しだけ背筋の伸びるものに変えてくれる、凛とした土の鼓動が待っているはずです。

AO3(あおさん)/ 32mm 管理人

昭和生まれのアラフィフのええおっさん。ガジェット、キャンプ、食をテーマに、大人のこだわりを探求。実体験に基づいた、日々の生活を少しだけアップデートするヒントを発信中です。GR4の抽選販売に申し込みましたが、外れたようです。懲りずにまた次回!